【参考:モード、ジャズのアドリブについて】
さて50年代後半、マイルスはファンキー・ジャズやインター・プレーの概念の登場で、最初の成熟をみたモダン・ジャズに新たな流れを作るべく、先ほどのビル・エヴァンスや作曲家たちと協力して、新たな演奏方法をジャズに導入します。それが「モード・ジャズ」です。全曲モード奏法で演奏されているアルバム、「カインド・オブ・ブルー」に収録されている
「ソー・ホワット」@Kind of Blue
@Live
ここでモード奏法のために少し理論的な説明をしますと、西洋音楽やその影響を受けているロックやジャズなどはメロディ(旋律)とハーモニー(和声)、リズム(律動)の3つに分かれているのは知っていますよね。ジャズだとメロディはサックスなどのソロイストがハーモニーはベーシストが担当しています。ベースは曲中で各小節のコード(和音)をもとに、ベースラインを刻んでいます。(ベースラインはコードの代表的な音ををひとつずつ配列したもの〕ベース奏者にはハーモニーの代弁は勿論、リズムキープやカウンターメロディ(対旋律)の提示など様々な役割があります。音楽を深く聴きたいならまずベーシストに注意を向けてみましょう!
参考「リズム・チェンジ」と呼ばれるパターンのベースライン
また一方でビ・バップ以降のアドリヴ奏者は、曲中で目まぐるしく変わるコードの音を自らのメロディラインに入れることでベースラインとの一体感、曲の進行感を出そうとしました。アドリヴといっても理論を無視してでたらめに演奏している訳じゃないんですよ。
そしてここからが本題ですが、スイング初期は1つのコードで構成されていた曲もバップ期にはあの手この手でどんどん複雑化されていきます。
「リズム・チェンジ」のスイング時代とビ・バップ時代のコード進行の例
スイング時代 │B♭ │ 〃 │ 〃 │ 〃 │
↓
ビ・バップ時代 │B♭ Gm7 │Cm7 F7 │B♭ Gm7 │Cm7 F7 │
↓
細分化の例 │B♭ Bdim │Cm7 C♯dim│Dm7 G7 │Cm7 B7 │
ジャズライフ2008年4月号より引用
(ちなみに「オレオ)は代表的なリズム・チェンジです)
さて そんなジャズのコード進行ですが、ハードバップ時代に入り更に手の込んだものなります。1コーラスで何回も転調を繰り返すコード進行や、不協和音の追加などで調性が希薄になっていきました。
さて そんなジャズのコード進行ですが、ハードバップ時代に入り更に手の込んだものなります。1コーラスで何回も転調を繰り返すコード進行や不協和音の追加などで調性が希薄になっていきました。解説書なんかでは「ハード・バップの理論・演奏方法が行き付くところまで行ってしまった」という文脈で、よくこの曲が挙げられます。頻出する臨時記号(♭や♯)をみれば未経験のひともなんとなく感じがつかめるのではないでしょうか。こうして複雑になったコード進行によって、アドリブはスリリングで劇的なものになっていきました。しかしコード進行の複雑化に伴い、同じ曲を誰が演奏しても同じような内容の演奏になってしまうという弊害がでてきます。その理由はソロイストがコードの音をアドリブに入れてグルーブ感を出すという、バップの特徴が仇となったものでした。予定調和なコード進行を打開するために徹底的に複雑化したら今度はアドリブがマンネリに陥ってしまったハード・バップ。そんなバップの流れに限界を感じ マイルスたちは「コード」とは別の概念、「モード」を導入します。
【バップとモードのコード進行の違い】
それぞれのテーマを抜いた譜面の比較
ジャイアント・ステップス(in C)
│C♯m7 F♯7 │BM7 D7 │GM7 B♭7 │E♭7 │
│Am D7 │GM7 B♭7 │E♭M7 F♯7 │BM7 │
ソー・ホワット(in C)
│D drian │ 〃 │ 〃 │ 〃 │
│ 〃 │ 〃 │ 〃 │ 〃 │
(ジャズライフ 2008年4月号より引用)
バップはコード進行が作り出す緊張と緩和に沿いながら、それぞれのコードの構成音と外音を組み合わせてメロディーを作り、モードは設定した特定の旋法(音階 ドレミ♭ファソラシド♭やドレミファ♯ソラシドなど全部で7種類)に合う音でメロディーを生み出します (Wikipediaより引用しました)
これにより今までコードの音を抜き出すことが中心だったアドリブが、モード奏法の導入で演奏者はより自由度の高いアドリブができるようになりました。